賞味期限が切れた小沢一郎
中央公論 2010 3 MARCH
特集 小沢とカネと民主党
賞味期限の切れた小沢一郎 御厨貴 東京大学教授
もう「闇将軍」は生まれない
歴史的にみても、賞味期限が切れた小沢一郎
# やがて悲しき政党政治哉
小沢一郎を近代史の、特に近代の政党政治史の文脈のなかで考えると、彼の先達
と言ってよい人物が三人いるこることに気づかされる。星亨(ほしとおる)、原敬そして
田中角栄である。
政党政治をこの国の政治のなかに押し込めるために尽力した反面、その代償のよう
に金銭のスキャンダルにまみれていったという共通点がある。
言い換えれば、日本の政党政治のアキレス腱が常にカネの問題にあることがわかる
# 政権VS.検察は政VS.官
そもそも検察とは50年以上にわたり自由民主党の一党優位体制にそれなりに適合
して来た組織で、旧来型の発想になじでいる。
民主党体制に代わることに対するある種の危険性を感じていることが背景にあるに
は間違いない。
政治主導と脱官僚、つまり官僚と対決すことによって主導権を発揮するのが民主党
の基本的なあり方である。
検察は他の行政官庁とは異なり、独立した特殊な機関であるからといって、そのま
ま手つかずではいられるわけではないだろう。
検察の危機感を呼び覚ましたであろう契機が三点ある。
1.昨年12月に公正取引委員会の審判制度を廃止する方針が決まり、公取委が審
決の権限を奪われることである。
2.1月15日に内閣法制局長官を交代させている
この人事は今国会から法制局長官に答弁させないという政府の方針の延長上に
ある
3.郵便料金の障害者割引制度が悪用さてた事件に絡み、更生労働省の元局長が虚
偽有印公文書作成、同行使違反に問われた郵便不正事件の成り行きである。
この意味で、検察が先手を打って政治に介入してきたという印象を受ける。
# 小沢氏側の問題点
1.昨年12月の訪中
2.訪日した中国副主席と天皇陛下の会見
3.予算案の決定において、官邸に乗り込んで、原案を撤回させて自身どおり決定
させた
# 変革の時代は我慢が必要
どのような改革にしても、わずか3~4ヵ月:あるいは1年程度で立派な組織や制度
ができあがり日本の政治がよくなることはあリ得ない
# かってのままの自民党政権には戻らない
もっと広い意味で、これまで何も変えなかった体制から、何かを変えていく体制へ
の体制を選択したのは我々であり、その担い手の顔ぶれが代わるとしても、この
「変える」という方向性については不可逆的に続いていく
# 小沢氏は「闇将軍」にならない
# 小沢氏は賞味期限が切れた
彼の余りある情熱を「変える人材」を創ることに集中すべきなのではないか
したがって、検察の意図していることは全く別の形で、歴史のひとつの転換点に
なるのではないか
みくりやたかし 1951年生まれ
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